テレビCMでよく見るあそこ? それとも近所にあるあそこ?

リフォーム業者はテレビでCMをしているような全国区の大企業のほうがやっぱり信用できるのでしょうか? それとも地域のことをよく知っていて近所のほうが信用できるのでしょうか? これをいかに騙されないかから考えてみます。

どのようなリフォーム業者を選べばよいか

どのようなリフォーム業者を選べばよいかは、あなたの知識と目的とこれにかけられる時間によって変わってきます。このことを説明するために、まずは取引の力学をみてみましょう。

リフォームは安い買い物ではありません。仮住まいへの引っ越しなど生活の変更を余儀なくされる場合もあります。またバリアフリー対策など、今後の生活のありかたに大きな影響を与えます。
これだけの人生の大事なのですが、一番の問題は知識が非対称だということです。多くの人は建築のことについて専門知識がありません。リフォームの設備の相場どころかメーカーの名前も調べて初めて知ったという人がほとんどではないでしょうか。

しかし相手はプロです。
そして、この状態は「騙す」という行為を発生させやすくします。

もしお互いが同じ知識と経験を持っていて相場も商慣習も関連法規も理解しているのならば、騙すインセンティブは少なくなり、騙しが露見したときのリスクが大きくなります。結果、騙される可能性は低くなりなす。
客側も自分が危うい状態にあることが分かっています。だから対抗策が猜疑心になります。疑心暗鬼になって全てにケチを付けて顔色や声音といったものだけで判断しようとします。こうなるともう泥沼です。業者は客対応やクレーム対応で赤字になってしまいます。損切をする算段をつけなければなりません。モンスター顧客にいつまでも関わっていられないのです。
結局これは、客も業者もどちらも損をしてしまったといえます。
この損を避けるには3通りの解決策が考えられます。

ケース1 有名な大手を選んだほうが良い場合

知識 あり
目的 あり
時間 なし
もしあなたにリフォームに関する知識とリフォームで何をしたいかの目的はあるけれども、交渉や確認に時間をかけられないという場合です。あなたには知識があるので、ある程度は相場が分かりますし、それを調べることもできます。また業者を比較して値段の差がどこにあるかを見分けることもできるでしょう。自分自身の経験でなくても、身近にリフォームを経験した人がいて、法律や保険といった制度についてもある程度分かっています。そもそもリフォームと言っても日本の商法や商慣習の中で行われるビジネスの一つに過ぎないわけですので、別の業界であっても普段から契約や瑕疵担保といったことに慣れていれば、そこまで未知の業界というわけでもないでしょう。
この場合は、やはり大手というのは仕入れの購買力がありますので、安く仕入れたり在庫があったりします。つまり選択肢が多い。でも選択肢が多いのは反面困ったことでもあります。決めきれなくなります。ですからはっきりとした目的が必要です。
知識があり目的があり、目利きができて決断ができる。資料を比較できる。ここまでできるのだったら、後は業者に任せてしまっても良いでしょう。時間を節約できます。もちろん丸投げしてはいけませんし、常識的な範囲で要所を締めなければいけませんが、ここまでできる方ならば、それは言われずともそうするでしょう。

ケース2 地元密着を選んだほうが良い場合

知識 なし
目的 あり
時間 あり
知識はないけれども、家をリフォームしてどういう生活をしたいかははっきりとしている場合、そして質問や確認のための時間をとることができる場合は、地元密着が良いです。
あなたには目的があります。雨漏りや外装の剥落の修理という直接的な目的の場合もあれば、バリアフリー対策や子供の成長に伴うものといった将来のことを考えて今やってしまおうということもあるでしょう。
これらは知識がないと表現することができません。これはいわばいい音楽を作りたくてそのアイデアやインスピレーションも頭の中にあるけれども楽器が弾けないようなものです。そのときは楽器の弾けるプロに自分のやりたいことを説明して、代わりに演奏してもらわなければなりません。
それは手間のかかることです。もどかしいことですし、思っていたよりも対象が明白ではないかもしれません。例えば外壁修理でいうと、色を塗り替えるということ一つをとっても家族全員の一致を簡単に取ることができるでしょうか? 屋根を修理するときについでだからここも直したいという話は出てこないでしょうか?
そしてこれは単なる未来の夢の話ではなくて、そこそこの値段のかかる現実の話です。見積もりをとって丹念にその目的はその金額をかけるに値するか、他の方法はないか、それをプロと一緒に探っていかなければいけません。
こういったことをしてくれるプロは地元でないといけません。会って話をするためにお互いに1日がかりではこんな手間をかけることはできないし、その地域社会のことをよく分かっている人でないと、ふわふわとした夢を現実的に描いてくれないからです。

ケース3 モンスター顧客を目指す場合

知識 なし
目的 なし
時間 あり
知識もないし、何がやりたいのかも自分で分かっていない。でも時間だけはある。とにかく損はしたくない。なにが勝ちなのかは分からないけど負けたくはない。
ならばそもそもリフォームをしなければ良いと思うのですが、本人には本人なりの理由があるのでしょう。このとき、複数の会社に相見積もりを出させます。現地調査でも「詳しくないからよく分からないけど良いようにやって」と丸投げをします。見積り金額が一番安かった業者と契約をして、後はひたすらケチをつけまくります。「良いようにやってくれるって言ったじゃないか」「普通こんなことありえないだろう」などとゴネまくります。なにせ時間はあるものだから、唯一の武器である時間を投入し続けます。そのうち相手が音を上げて自分が損をしても良いからこの客から逃げようと思うかもしれません。ポーカーでいうと手札がブタなのにも関わらず相手が降りるまでひたすらレイズする戦い方です。
善悪はともかく、一つの戦い方であることは確かです。しかし勝率はあやしいでしょう。もっとも勝ちを定義していないので、負けなかったことをもって勝利したのかもしれません。しかし恐ろしいことに、世の中にはこういった客の扱いに慣れている業者だっているかも知れません。時間はあくまで客側の話であって、契約そのものの目的はお金です。知識もなく目的もなく、自分の時間という本人以外にはどうでもいいものだけを武器にして戦いを挑んでくる人の財布は、「悪徳業者」にとってみれば鴨が葱を背負って来たというように見えるのではないかと思います。

まずは地域密着から

ケース1は中策、ケース2は上策、ケース3は下策だといえます。
最初は地域密着型を選ぶケース2から検討してみるのが良いと思います。自分に知識はない・・・ほとんどの人はこの条件はクリアすると思います。時間はある・・・これは状況次第です。雨漏りのような切羽詰まったものもあるので一概には言えないですが、多くの場合は作ればあるのではないでしょうか。
そして目的。ご家族とどういう生活がしたいのかを話し合います。もしかしたら聞きたくなかった生活への不満が出てくるかもしれませんが、それを受け止めることも含めて話し合い、理解し、その夢や希望は一体どうやったら実現したと言えるのかを考える。それがはっきりしたら、地域密着の業者に相談してみればよいでしょう。地域密着ならば相談をするのもやりやすいですし、見積もりの根拠を聞くのも、施工中に説明を求めるのも、アフターフォローで現場を見てもらうのもやりやすいです。そうして、円満な関係のもとで良いものを手に入れるというのが、可能ならば一番良いやり方であると思います。